阪神タイガースについての私案

 僕らや弟の世代においてタイガース優勝が大きな意味を持つのは、この18年の間に「勝てない球団」「勝ってはいけない球団」「勝ったら白ける球団」みたいな位置づけをされていたからのうように思う。僕らが物心付いてから今まで見てきたのは、「宿命として勝てない」タイガースだった。そもそもそんなのを見て20年ファンが続く人間がどれだけいるのか。勝つ可能性が少しでも高い方を応援するのが当たり前だ。だって勝った方が気持ち良いやん? 
 僕の阪神ファン黎明期、特に小学校時代というのは、そう言った環境だった。六年間クラス替えも無かったから余計にな。多くは巨人ファンで、阪神は何故か肩身が狭く、そのせいもあって僕は一時期はまったく興味を無くしてた。今までかろうじて知識を保ってるのは熱心な親戚(よく甲子園まで連れてってくれた。会員らしい。今年も何度か誘われたけど予定上行けなかった)や友人(日記を見れば一目瞭然)がいたからというのが結構大きい。
 そんな球団が、本当に優勝してしまったのだ。18年間(惜しかった92年を合わせても11年間)勝ってはいけないと言われ続け、優勝なんて言葉から一番遠かった球団が、優勝してしまった。これは、たぶん僕らの脳内で意識革命を起こすに十分に足る出来事なのだ。国が覆ってしまうほどの革命が起きてしまった。そんな感覚に近いかもしれない。ああいうバカ騒ぎに発展するのもそう考えれば当然のことだ(道頓堀はは大半野次馬だったが)。ただの騒ぎ好きもいるだろうが、それだけのエネルギーを放出するに足る出来事だ。阪神の優勝は希望だ。なんていう人がいるけど、これは人によっては本当にそういう事なのだ。18年という長い間負け続けても、勝つ一瞬というのはいつか来る。勝つまで僕らは、それを信じる事が出来なかった。タイガースファンというのは、そういう場所に居たんだよ。本当に。
 15日、友人と飲んで居たとき、「中津、冷めすぎ」という話をしていて、数年ぶりに会った友人が言っていた言葉がまだ記憶に残っている。
 「優勝したんやぞ、これがどういう事かわかってんのか?」
 熱心なファンほど、そういう気分だろうな。18年間信じていたファンが、一番信じがたい思いを抱くんだろうな。